カテゴリ:今月の樹木( 112 )

今月の樹木(2018年06月)

菅さん提供


ガン ピ (雁皮 落葉低木 ジンチョウゲ科)           

                                       花期56月 果期10


 明るく開けた山道の両側に花を付けたガンピが、まるで植えられたかのように並んでいました。日当たりの良い痩せ地を好むこの樹木の性質が良く分かる光景です。

 ガンピは枝垂れた枝という枝の先々に小さなラッパ状の花をまとまって付けます。花の一つひとつは1cmにも満たない長さで花全体の重さはわずかだと思いますが、それでも大きく枝が枝垂れるのは、表皮の下の内皮の部分の厚さに比べて木質部が細いことによるものと思われます。

 内皮は強靭で、楊枝ほどの細い枝でも手で引きちぎるのは容易ではありません。この内皮から作られてきたものが雁皮紙といわれる和紙で、繊維が短く細かい特徴を活かして透き通るような強くて薄い紙を漉くことができるそうです。

 奈良時代には紙を漉く技術も発達して、染料で染めた紙が当時既にあったことや、平安時代には和紙で作った着物も作られ始めたというから驚きです。

 江戸時代初期に伊達政宗がローマに派遣した支倉常長の一行には、鼻をかんで捨てた和紙が余りにも薄くて上質なため、民衆が争って拾ったという逸話が残っています。日本の製紙技術の高さが分かるエピソードです。

 和紙の主な原料はガンピの他にコウゾやミツマタが有りますが、雁皮紙はコウゾの持つ強さとミツマタの持つ光沢感、風合いを兼ねそなえていて、細い文字でも書きやすいことから平安期の女性たちに愛用されたそうです。

 平安の女性たちは、染色された色の異なる薄い紙を重ね合わせ、上の紙を通して下の紙の色がおぼろげに透けて見える二つの色が綾なす色の変化の妙味を(たの)しみつつ(ふみ)をしたためたということです。しかも色の組み合わせに名前をつけ、季節に合わせてそれを選んだということですから、昔の人の紙への深い情愛はプリンターから排出される印刷物しか手に取ることのない現代人から見れば夢想だにできないことですが、言霊(ことだま)という言葉が示すように言葉には霊力が宿ると信じられていた上代には、言葉を書き(しる)す紙にも人々は特別な思いを持っていたと考えてもおかしくはないように思います。

 手漉き和紙の技術の継承者がなく、和紙生産の存続が危ぶまれているという話を聞いて久しくなります。栽培が難しいと言われるガンピそのものも準絶滅危惧種に指定されている所もあるようです。

 可愛い花を付けるガンピも、世界に誇れる和紙も、ともに身近に触れられる存在であ

り続けることを祈ります。

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by str1685 | 2018-06-18 20:48 | 今月の樹木 | Comments(0)

菅さん提供


ナワシロイチゴ(苗代苺 落葉小低木 バラ科)           

                                            花期5月 果期6月

 田舎で日向(ひなた)(いちご)と呼んでいたナワシロイチゴは日の良く当たる土手や石垣に多く見られる苺で、白花がほとんどのキイチゴ属の中では珍しく(べに)(むらさき)の花を付けます。

 漢字で書く苗代苺の苗代とは、稲の種もみを撒き、田植えができる程度まで苗を育てる一定の区画のことで、苗代を作る頃に果実が熟してくることがこの名前の由来になっているようです。


 名前の由来とは裏腹に、苗代を作る時期にはまだ花の段階の地域が多いようで、実際に名前の由来は苗代の時期に花が咲くためとした記述を見ることもあります。

 名前が付けられた当時は稲の改良や稲作の技術も進んでいなかったでしょうから果実の熟す6月頃に苗代を作っていたとも考えられます。

 この花には一風変わった特徴があります。花が開いた様子を見たいと出向いたのですが、萼はこれ以上は反り返られないというほど反り返っていても花は一向に開かず、そのうちに花弁が落ちてしまっているということが何度もあり、まだ蕾が残っているのでチャンスはあると出直してみるといつの間にか果実だけになっているということもありました。

 実はこの花は開くことなく受粉を終え、受粉後の花は花びらを落として萼が閉じ、果実が熟してくると再び萼が開くという特徴を持った花だったのです。つまり、花びらは開かずにずっと裏側だけを見せていて、蕾と思っていたのは受粉後の花の姿だったわけです。萼が閉じるのは果実を守るためと思われますが、花が開かないのは萼の開閉にエネルギーを回して花弁を開くことは諦めた結果なのでしょうか。

 花を良く見てみると、萼は白い包み紙をそっと開いた形で、花は紅紫のしっとりとした茶巾(ちゃきん)(しぼ)りの上品な和菓子のようにも見えます。

 昔の田植えは豊穣を神様に祈って行われ、今でも各地に神事として残っていて、着飾っ早乙女(さおとめ)が田植えをする光景が田植えの季節になると毎年報道されます。早乙女苺はナワシロイチゴの別名で、三葉苺、五月(さつき)苺などとも言われます。

 花びらの表を見せない控えめなこの花には、菅笠(すげがさ)(あみ)(がさ)(まぶか)にかぶった(あで)やかな早乙女の姿が思い浮かぶ早乙女苺の名が一番相応しいように思います。


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by str1685 | 2018-05-20 06:46 | 今月の樹木 | Comments(0)

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イヌシデ(犬四手 落葉高木 カバノキ科)          

                                    花期45月  果期10
 シデの仲間を初めて見たのは樹木に興味を持ち始めた十数年前の季節は夏の終わりころのこと。
小さな葉の形をした
()(ほう)と一体になった種が幾重にも連なって枝にぶら下がった状態になっている樹木を見た時でした。

 このような形の種を付ける樹木にチドリノキという(かえで)の仲間があります。そのうえチドリノキの葉は楓の仲間でありながらイロハモミジのような切れ込みが全く無く、一見するとイヌシデのような葉の形をしていますので、当時生半可にチドリノキの存在を知っていたなら、このシデの仲間をチドリノキと誤認していたと思います。 

 春先に咲くイヌシデの花はいかにも風媒花といった感じの黄褐色の雄花がいくつも垂れ下がり、その先に緑色の苞を持った小さい目立たない雌花が付きます。樹皮には(かい)白色(はくしょく)の縦に白っぽい縞模様が入り、クマシデやアカシデなどシデ類の中では最も()(はだ)の美しい樹木で、公園樹等に用いられてもいるようです。

 シデ類のシデの由来は、()(すい)が玉串や注連縄(しめなわ)などにつけて垂らす稲妻型の四手(しで)(または(しで)垂)に似ていることによると言われています。
 植物名に付く“イヌ”は、本物に比べて劣っているとか役に立たないという意味合いで使われますが、イヌシデの場合はイヌシデより美観や用途で格別優れているシデの仲間は思い当たらないので気になっていました。
 シデの仲間は良く似ていて同定しづらく、その中でイヌシデは若枝や葉に毛が多いことが同定のポイントにもなっていて、毛の多さからイヌと付いたと考えられないこともないですが、そうするとネコや他の動物でなくイヌとなったのには何か訳がありそうです。調べてみると関係ありそうなウラジロカンバという樹木が見つかりました。

 ウラジロカンバはカバノキ科でも属が異なる樹木で、葉裏には白くて長い(ふく)(もう)があってネコシデとも呼ばれているようです。実際にはどうかわかりませんが、ネコシデと区別するためにイヌシデとなったのではないかと思い至りました。

 ネコ派の小生としてはネコシデの長い伏毛とやらをなでたりさすったりしてみたいところですが、居住地からは遠い奈良県の大峰山脈以東でしか見られないというのが少々残念なところではあります。

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by str1685 | 2018-04-26 17:31 | 今月の樹木 | Comments(0)

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クロモジ(黒文字 落葉低木 雌雄異株 クスノキ科)          

                                   花期34月  果期910

 3月に見られるクスノキ科の花はクロモジ以外にはダンコウバイ、アブラチャンがあります。どれも小さな花が(ひと)(かたまり)になって咲きますがダンコウバイやアブラチャンは開花の後に新葉が見られるのに対し、クロモジは開花とほぼ同時に新葉が展開します。新葉は枝先に集まって付き、その形は羽根突き遊びの羽根のようにも見え、その基部に付く半透明の小さな花の集まりと相まって、枝の先々には自然が作る造形美の趣といった感が有ります。


 樹皮や葉には清涼感のある芳香が有り、抽出される精油(エッセンシャルオイル)には様々な薬理作用が有るといわれています。以前にこの香りを嗅いだとき、鼻の通りが良くなったように感じたのは血行促進作用があるといわれるその効用だったのでしょうか。熟すと黒くなる

実にも同じような香りが有るようです。
 香りのよいクロモジは高級楊枝として菓子楊枝や爪楊枝に利用されていて、戴き物の高価な和菓子に切り分け用に表皮の付いたクロモジの楊枝が付いていたことがありましたが、お茶の世界ではこの楊枝のことを楊枝とは言わずに黒文字と言うのだそうです。

 クロモジの名は、若い枝の暗緑色の()(はだ)現れる黒班を墨で描いた文字に見立てて名づけられたというのが通説です。名の由来を知っていても黒班は単なるシミにしか思えませんでしたが、色々な樹木の名の由来を知るにつけ、この説もまんざらでもないように思えてきました。


 木の葉を(いかだに見立て、その葉脈上に付く花を筏に乗る人に見立てたハナイカダの例や、ヤマボウシの名は、花の中央の丸い()穂と(すい)周りの白い(ほう)白い袈裟を(けさ)頭に巻いた山法師(山寺の僧侶)に例えたという昔の人の想像力や発想力の豊かさからすれば、クロモジの黒班も文字に見えたというのも納得できます。

 ところがクロモジの由来に最近別の説を目にしました。それは、昔の貴人に仕えていた女房(高位の女官)の間で使われていた物事を婉曲的に表現する女房言葉の一つに、かもじ(髪)、しゃもじ(杓子)のように語尾にもじを付けるもじ言葉というのがあり、元は黒楊枝と言っていた楊枝を奥ゆかしく黒もじと呼んだというものです。


 昔の宮中の女性たちは、万葉仮名を崩して平仮名の元となったというくずし字で和歌や恋文をしたためていたそうですが、女房の間では楊枝を単に黒もじと呼んだだけでなく、表皮に残る文様を文字通り文字に見立てて優雅に言葉遊びもしていたのでは、と考えてみるのも面白いですね。ひょっとして、文字に見立てたという説の始まりも、本を正せば女房たちだったのかもしれません。そんな思いで改めてクロモジを見てみると、シミに見えていたものが万葉仮名のくずし字に見えてきました。


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by str1685 | 2018-03-06 08:36 | 今月の樹木 | Comments(0)

今月の樹木(2018年02月)

菅さん提供


コナラ(小楢 落葉高木 ブナ科)          

                                     花期45月  果期910

 2月の初めにコナラの幼木に季節外れの紅葉を見ることができました。前年の年の瀬にはこの木の葉は緑色を保った状態だったので、なんと季節を読み違えたコナラだろうと思いながらも、年が明ければ早晩褐色の葉になるだろうと予想していました。

 本来ならこの時期のコナラは冬枯れの木立(こだち)の中でクヌギと共に黄褐色の葉を寒風にさらしています。コナラは紅葉の時期にもそのような褐色の葉のイメージがあることと、葉が色づいても渋みの感じられる控えめな色で目立たないため、紅葉といってもピンとこないかもしれませんが、秋から冬にかけては黄色からオレンジ、赤と変化してやがて黄褐色と多彩な色合いを見せてくれます。赤くなった葉の色は日本の伝統色で植

物のアカネとムラサキとで染めた暗めの赤の(ふか)()(こきひ、こきあけとも)という印象です。


 コナラやクヌギが冬になってもなかなか落葉しないのは、もとは南方系の常緑樹で葉を落とす必要が無かったものが北の方に進出してきたため、葉を切り落とす離層が発達していないことによるという話をどこかで聞いた記憶がありますが、それにしても2月の厳寒期に紅葉が見られるとは思ってもいませんでした。

 この近くでは前年の春にコナラの実生を観察できました。意外だったのはドングリの発根はお尻側からと思い込んでいたのが先の尖った所から発根すること、それとアサガオの子葉のように地上では展開しないということ。つまり、ドングリは地表に横たわった状態で根や芽に栄養を供給しているわけです。光合成をする必要のないほどドングリには栄養が詰まっているんですね。


 花期には黄緑色の雄花が多数垂れ下がって見えますが、雌花は数が少なく小さくて目立ちません。
 花の時期には若木にリンゴのような丸くて小さい赤いものができることがあります。外見も内側もリン
ゴに似て実際食べた人がいるというのも(うなづ)けます。

 この正体は極小な蜂の幼虫の作る食料兼住み家で、その名もナラメリンゴフシという(むし)(こぶ)です。
 マタタビの虫瘤は薬効が知られていてマタタビ酒にしたり塩漬けなどで食べられもしますが、見た目は
コナラの方が断然美味しく見えます。コナラの虫瘤にも薬効が有れば、見た目の悪さでマタタビの方は敬遠する人でもコナラの方なら食べようという人がいるかもしれません。果たしてコナラの虫瘤にも薬効は有るのでしょうか。


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by str1685 | 2018-02-07 14:56 | 今月の樹木 | Comments(0)

今月の樹木(2018年01月)

菅さん提供


イヌザンショウ(犬山椒 雌雄異株 落葉低木 ミカン科)  
                         花期78月  果期1011

 これは珊瑚だ、と思わず口をついて出そうになったのはイヌザンショウの赤くなった花柄(かへい)を初めて目にしたときのこと。珊瑚といっても浅い海で珊瑚礁を成す珊瑚ではなく、ネックレスや指輪などに加工され、彫り物や置物にも利用される深海の宝石珊瑚のことで、イヌザンショウの赤くなった花柄の色や形からは宝石珊瑚の形容しか思い浮かびません。


 花の時期には緑だった花柄の色は花が終わってしばらくすると色づき始め、秋の深まりと共に鮮烈な赤に変化していきますが、初冬には赤黒くなって鮮やかさは次第に失われていきます。
 これが本物の宝石珊瑚であれば、赤黒いものは
()(あか)珊瑚(さんご)と呼ばれる最高級品とされていますので、イヌザンショウを珊瑚と思って見る分には冬に入ってからでも観賞する価値は十分あると言えそうです。

 葉や実にサンショウのような香りがしないため、サンショウに比べて利用価値の無いという意味のイヌという接頭語が付けられたイヌザンショウ。そんなイヌザンショウでも花柄の美しさはサンショウの比ではありません。葉と果実に含まれる成分は薬用として実用的な面も持ち合わせています。

 珊瑚は世界の各地で、開運、子宝に恵まれるお守り、魔除けなどのアクセサリーとしても扱われて
いるようです。

 花言葉と同じように宝石にも宝石言葉(石言葉とも)がありますが、珊瑚の宝石言葉は長寿や幸福という縁起の良い言葉が与えられています。正月の縁起物の七福神の乗った宝船にも金銀財宝と共に宝石珊瑚が描かれていますね。
 年の初めの運試しに山に入り、まだ色の残るイヌザンショウの宝石珊瑚に出会えたとしたら、その年はきっと良い1年になると思います。


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by str1685 | 2018-01-08 08:31 | 今月の樹木 | Comments(0)

今月の樹木(2017年12月)

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カキ(柿 落葉高木 カキ科)          

                            花期56月  果期1011

 柿といえば日本の秋を代表する果物の一つで、かつては山里の民家の庭には必ずといっていいほど植えられていました。甘いものが少なかった時代には手間のかからない貴重な食べ物だったと思います。

 晩秋ともなると、枝に付いたままの朱色の柿の実はいよいよ赤みを増して熟柿(じゅくし)となってきます。渋柿も熟柿になれば渋が抜けて甘くなり、ぷよぷよとゼリー状になって今にもはちきれそうな熟柿は昔の子供のこの季節のご馳走でした。

深い落葉を踏みしめ、沢沿いの細い山道を歩いていて1本の柿の老木と出会ったのもそんな季節でした。ゴツゴツした幹の瘤、節くれだった太い枝が風雪に耐えてきた年月を感じさせます。

そこからさらに歩を進めるとすぐに朽ち果てた炭焼き窯が目に入りました。窯のドーム状の天井は崩れ落ち、焚口の石積みがかろうじて炭焼き窯であったことを(うかが)わせます。

 山歩きをしているとこういった炭焼き窯の跡にしばしば遭遇することがあります。草生(くさむ)してはいるが原形をとどめているもの、わずかにすり鉢状のくぼみだけを残しているものなど様々ですが、そこにはかつて山に密着して生活していた人の匂いのようなものが感じられ、言うなれば、城跡などの遺跡に接した際にそこはかとなく湧き起こる感慨にも似た思いで出会うごとに写真に収めています。

 炭焼きは原木を切り出した後に長さを揃える玉切り、窯詰の作業と続きますが、山の急斜面を重い原木を運んだり、窯の中では中腰の姿勢を強いられたりと大変な仕事です。今のように便利な道具が無かった時代には木の一本を切るにもかなりの労力を要したでしょうから昔は今以上に重労働だったはず。火を入れてからは一昼夜は炊き続ける必要があることから、人里から離れた山では泊まり込んでの炭焼きもあったそうです。

 ここで炭焼きをしていた人が熟柿を口にすることがあったとすれば、それは窯詰が終わって焚口から火を入れ、過酷な労働の一日が終わろうとする頃、窯に十分に火が回って一息ついた辺りだったのではないでしょうか。

 漆黒の闇の中、焚口の炎に照らし出された透き通るような熟柿にかぶりつく瞬間は至福の(とき)だったに違いありません。
 帰路をたどりながら、そんな情景を思い描いた晩秋の山歩きの一日でした。


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by str1685 | 2017-12-12 08:05 | 今月の樹木 | Comments(0)

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ゴンズイ(権萃 落葉小高木 ミツバウツギ科)          

                            花期56月  果期1011
ゴンズイと聞くと、ひれに毒があり、釣り人の間では外道扱いされるドジョウに似た魚を思い浮かべる人も多いと思います。樹木にもゴンズイの名を持つものがあり、この名は材がもろくて匂いがあるため利用価値がなく、同じように利用価値のない魚のゴンズイとの共通点から樹木名もゴンズイになったと広く言われていますが、熊野権現の守札(まもりふだ)を挟む杖にこの木を使ったことから、権現杖がなまってこの名が付いたという説もあります。


 節分に焼いたイワシの匂いで鬼を追い払うというような、匂いで邪気を払うという信仰は古くからあったようなので、材に匂いのあるゴンズイは権現杖には打って付けだったのかもしれません。魚のゴンズイは毒のひれの部分を除けば食べることができ、樹木のゴンズイも実の美しさから公園などに植栽されていますので、共に利用価値がないわけではありません。


ゴンズイの魅力は、薄緑色の小さな花とは打って変わって秋に姿を見せる鮮やかな赤い実です。実の形から狐の茶袋の異名をもつゴンズイの実は袋果(たいか)と呼ばれるもので、熟して裂開すると赤い果皮の内側にある黒い種子が目を引きます。このようなコントラストの強い色を配色して目立たせることは、種子を散布してもらう鳥が見つけやすくなる効果があり、これは二色効果といわれ他の植物にも見られます。


 アフリカ原産でミッキーマウスの木というのがあるようですが、ゴンズイも見ようによっては実の形がミッキーマウスに見えることがあります。

 秋にゴンズイに出会ったなら、どこかにミッキーマウスが隠れていないか探してみるのも楽しいと思いますよ。

余談

ミッキーマウスの誕生日って?

日本においては11月18日は「ミッキー&ミニーの誕生日」と設定されています。そしてその11月18日はディズニーモバイルサイトでも「誕生日」と定められています。


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by str1685 | 2017-11-17 07:33 | 今月の樹木 | Comments(0)

菅さん提供

クリ(栗 落葉高木 ブナ科)           

                     花期 67月 果期9月~10

 若いころに女性の好物は、いも、たこ、なんきんと聞いたことがありますが、当節はいも、くり、なんきんともいうようです。

 ある調査では秋の味覚なる食べ物の中では、クリがナシやブドウを差し置いて男女を問わず食べたいものの上位にランクされたそうです。

 近年の遺跡の調査では縄文の昔からクリが栽培されていたという報告もありますので、クリ好きな国民性は縄文人に刻み込まれたクリ好きのDNAが現代まで受けつがれているのかもしれません。

 旅行会社のクリ拾いのバスツアーは秋のツアーの定番の一つのようで、クリご飯に焼きグリ茹でグリ、さらには和洋を問わずスイーツにも使われるクリは日本の秋にはなくてはならない味覚の一つですね。

 クリは食用以外にも重宝されてきました。クリの材は耐久性と耐水性に富むことから家屋の土台など湿気の多いところに昔から使われ、古い鉄道マニアなら枕木に最も適した木材としてかつてはクリが多用されていたことをご存知の方も多いことでしょう。

 山に自生しているヤマグリまたはシバグリと呼ばれているものは栽培種の原種といわれ、かなり小粒ですが味は栽培種に引けを取りません。

 子供のころ学校帰りにヤマグリを山道で拾うと外の固い鬼皮を歯でむき、渋皮も渋みを我慢して前歯でこそぎ落とし、それから口に放り込んでカリコリッと栗の風味を味わったものでした。

囲炉裏で焼いたクリも香ばしくておいしいものでしたが、囲炉裏の(はた)で北原白秋の詩という一節焼きグリ茹でグリやいゆえよを歌のように口ずさんでいたのは兄弟姉妹の誰だったか、亡くなった母だったか・・・。栗を見ると目に浮かんでくるのは、囲炉裏を囲む家族団欒の懐かしい思い出です。


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追記
雄花と雌花の両方が判る画像を追加しました。(栗の花が咲くと独特の匂いがして、昆虫も沢山集まります。栗の受粉は風媒花でなく、虫媒花です。)また、自家不結実性でため1本の木では、結実は難しく異品種も混植することが必要です。
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by str1685 | 2017-10-12 09:00 | 今月の樹木 | Comments(0)

菅さん提供


マルバハギ(丸葉萩 落葉低木 マメ科)          

                         花期89月  果期1011

 秋を代表する花はコスモスやダリアという人もいれば、山野草好きの人ならキク科の花やタデ科の花を思い浮かべる人もいることでしょう。

 萩を最初に思い浮かべた人は、万葉集に収められている山上憶良(やまのうえのおくら)が秋の野に咲く花を詠んだ和歌が元になっている「秋の七草」に通じている人でしょうか。

 ちなみに和歌には萩の花を筆頭に、ススキ、クズ、カワラナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウの七つの花が詠まれています。

 春の七草は食べるもので秋の七草は愛でるものとよく言われますが、秋の七草は愛でるだけではなく昔の人の生活と深く係っていたようです。


 和歌が詠まれた時代の人々がススキを美しいと感じていたかどうかはともかく、和歌にはススキの穂に

宿る露を詠んだものや、穂が風にそよぐさまを人の手招きになぞらえて恋人や夫婦の情愛を詠んだものなど数多くあります。

 ススキは屋根をふく材料として重宝されたことでしょうが、萩も茎を束ねて垣根にしたり細い所は(ほうき)に、茎の皮は縄にするなど必需品だったようです。

 めまいやのぼせに効き、強壮効果もあるという萩の葉のお茶も古くから飲用されていたようで、地名や料理屋に萩の茶屋と名の付くものがあちこちにあるのは、昔はそこで旅人を萩茶でもてなしていた名残かもしれません。

 クズは根からくず粉が採れ、茎は籠を編んだり、薪や刈り取った柴を束ねる用途が有りました。

 萩やクズ、ススキを含めて他の七草のそれぞれも古代より観賞以外に薬用として用いられ、今日(こんにち)まで利用されているようです。

 ところで、万葉集に詠まれている花では萩が最も多いそうです。萩は古くには(にわ)()(ぐさ)とも言ったそうで、このようなことからも昔の人には 萩が身近な存在だったことが分かります。

 山上憶良も萩の庭を愛でつつ七草を詠んだのかもしれませんね。


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by str1685 | 2017-09-23 20:28 | 今月の樹木 | Comments(0)