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今月の樹木 2020年3月(ケヤマハンノキ)

菅さん提供

ケヤマハンノキ (毛山榛の木 落葉高木 カバノキ科) 
                                     花期3月 果期10~12月                  

 はんのきの それでも花の つもりかな
 この句は、小林一茶が花とは思えないハンノキの花を詠んだものと言われています。
 確かにハンノキと同様な花をつけるケヤマハンノキの花を見ても、7~9cmほどの雄花の尾状(びじょう)花序(かじょ)(細長い花軸に柄の無い花が多数ついて尾状に垂れ下がる)がいくつも垂れ下がっている様子は一見しただけではとても花とは思えません。初めて目にした人は、無数の芋虫がぶら下がっていると思われそうな形の花で、前年に実を結んだ長さ2cm前後の松かさ状の果実も種子がこぼれ出た後も枝先に残っていて、これも芋虫が作った繭(まゆ)と見まがう形と大きさです。雄花だけではなく、雄花から少し離れた位置に付く小さく赤い雌花の花(か)穂(すい)(複数の花が集まって穂状になったもの)も、花芽と間違えられてもおかしくありません。
 同じカバノキ科でも、クマシデ属のアカシデやイヌシデの開花期には、雄花、雌花ともに花を形作っている苞(ほう)とよばれる部分が目立ち、ハンノキやケヤマハンノキより花らしく見えます。
 花の見分けがしづらいハンノキとケヤマハンノキですが、ハンノキの雌花穂は上向きにつき、ケヤマハンノキの雌花穂は下向きにつくので判別できます。
 
 花と認識しづらいものを花と詠んだ一茶の句からは、俳句の素養のない小生でも、俳句界で名を成した一茶の俳人としての感性と鋭い観察眼をうかがい知ることができます。
 同属のヤマハンノキは乾燥気味の土質の所でも見られるようですが、ケヤマハンノキは川岸や谷筋などのやや湿潤な所を好むようです。ケヤマハンノキより1~2ケ月早く開花するハンノキは湿地を好み、根が常に水につかるような場所でも見られます。
 ケヤマハンノキの名の由来は、ヤマハンノキと比較して葉や若い枝などに毛があることによるものです。
 ハンノキ類の花は普段はあまり見向きもされませんが、意外な所で話題に上ることがあります。カバノキ科の樹木の花粉は花粉症を引き起こすことで知られていてこの木も例外ではなく、花粉症の季節に話題になることがあります。
 くしゃみは冬の季語の一つになっているそうですが、一茶が花粉症で悩んでいたとしたら、上の句も違ったものになっていたかも知れませんね。

今月の樹木 2020年3月(ケヤマハンノキ)_d0024426_22152338.jpg


今月の樹木 2020年3月(ケヤマハンノキ)_d0024426_22151979.jpg


by str1685 | 2020-03-06 22:06 | 今月の樹木

里山の整備・管理活動を行い、自然に親しみながら会員の親睦と健康維持などを目的としています。


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