今月の樹木(2019年2月)
2019年 02月 19日
菅さん提供
ツガ(栂 常緑針葉高木 マツ科)
花期4~5月 果期10月
裾野に田園が広がる小高い丘の細い道を登っているとき、中腹で足元にたくさんの松ぼっくりが落ちているのを目にしたのは、春まだきの二月の良く晴れた日でした。
見上げても松の木は見当たらず、近くにぽつんとそびえていたのは、葉の形からは松の木には見えない一抱えはありそうな大木でした。
松ぼっくりと大木を見比べながらしばらく考えたところ、大木の正体はほどなくマツ科のツガということが分かりました。
アカマツの松ぼっくりは拾って遊んだり、良く燃えるのでかまどの焚き付けに使ったりして子供の頃からなじみのあるものでしたが、ツガの松ぼっくりを見たのはこの時が初めてのことでした。
松ぼっくりはアカマツのものと外見はそっくりですが、かなり小ぶりという違いがあります。ひだの間に入っている種は翼を持っていて風で散布される点はアカマツと共通です。
アカマツは尾根筋でよく見かける樹木で、ツガも同じような環境を好むようです。分布は本州以西となっているようですが、アカマツほどには見かけません。
ツガの大木のある丘の頂上は、戦国時代には山城が築かれていたところで、土塁や空堀が今に残っていて、一角にはかつては社殿を構えたそれなりのお社があったようですが、今では小さな祠が鎮座するだけとなっています。
神社で大木になった杉を良く目にするのは、天を衝くようにそびえるこの木のてっぺんに神が降臨するという思想があるためと言われていますが、ツガも同様に神木として植えられているところも全国的に見るとあるようです。
戦国武将が戦勝祈願をしたであろうと思われる山上の社殿があった周りにもツガが植えられ、中腹で見たツガは代を継いできたその子孫だったのでは、などと思いを巡らしながらその日は山城の遺構を後にしました。