今月の樹木(2019年01月)
2019年 01月 20日
カナメモチ(要黐 常緑小高木 バラ科)
花期5~6月 果期11~12月
樹木の花がどれも散って若葉になってしまった中で、紅葉の季節でもないのに思いがけず赤い葉が見える、と清少納言が枕草子に取り上げている樹木はカナメモチと言われています。
季節が巡って年も改まった真冬、紅葉していた木々のどれも葉を落とした冬枯れの中に、思いがけず赤い実を鈴なりに付けたカナメモチを見ることがあります。
別名アカメモチと言われるように春先の新葉は赤く、新緑の中で良く目立ちます。真冬の季節には常緑の濃い緑の葉と対照的な真っ赤な実もいやが上にも目立つ存在で、鳥たちにとってはこの時期には貴重な食料と思われますが意外と食べられてはいないようです。
いろんな木の実を味わった中ではカナメモチは不味い中でもとりわけ不味いというほどでもなく、バラ科の実の果実酒はどれも芳醇な酒になった経験から、カナメモチの実でも旨い酒ができるのではないかと思っているくらいなので、鳥の味覚と人の味覚とではかなり違いがあるということなのでしょう。
カナメモチは漢字では要黐と書き、固い材が扇子の要に使われたということと、革質の葉がモチノキに似ることからこの名が付けられたようです。
赤い実を付けるマンリョウやナンテンは正月飾りに良く使われます。マンリョウは万両に通じ、ナンテンは難を転ずるに通じる縁起物という訳ですが、カナメモチについては縁起物扱いされて正月に使われるという話は聞きません。それどころか、枕草子の中では品が無い感じ(しななき心地)の木とさえ書かれています。
緑に映える赤い実も、梅の花に似た白い花も、どこがどのように品が無いのか凡人にはさっぱり分かりませんが、カナメモチの名誉のために正月飾りに使える要素がないか考えてみました。
物事の最も大切な点や事柄を指して肝心要と言うときの要の語源は、扇子の要に由来すると言われています。要は扇子の中骨がバラバラにならないように束ねて留めてある最も大事な部分で、その扇子は開いた時の末広がりの形から縁起物として正月飾りにも使われます。
カナメモチの花言葉は「賑やか」。その実を正月に飾れば一家が一つにまとまり、賑やかな正月が迎えられるということになります。
カナメモチのモチも正月には欠かせない餅に通じ、マンリョウやナンテン同様に縁起の良い植物となります。
という次第で、めでたく縁起物の仲間入りと相成、めでたしめでたし。