今月の樹木(2018年12月)
2018年 12月 15日
菅さん提供
シャシャンボ(小小坊 常緑中高木 ツツジ科)
花期6~7月 果期11~12月
チャセンボと言う木をご存知ですかと問われたのは、あるクリニックの先生と庭木の話をしていた時のこと。
そのような名は聞いたことも活字で目にしたこともなく、どんな樹木か気になってチャセンボチャセンボと呪文のように唱えながらクリニックを後にしました。
外来の樹木かとも思いましたが、この先生は普段は白衣姿でもご自宅では和服の似合いそうな恰幅の良い方で、ツリバナやアクシバなど風流を解する人ならではの樹木がご自宅の純和風の庭園には植えられ、下草も日本の森で見られるようなものを検討されていて外来樹ということはあり得ません。
言葉の響きからどこかの方言ではと思いつつ帰宅後に調べてみると、愛知や三重などでシャシャンボのことをチャセンボと呼んでいることが分かりました。
シャシャンボはブルーベリーと同じツツジ科スノキ属の樹木で、実に六角形の萼のあとが残るところや白い粉をふくところはそっくりで、ジャムにも果実酒にもしたことのある見慣れた樹木ですが、チャセンボがシャシャンボだったことには思い至りませんでした。
ツツジ科の中では珍しく高木になる樹木で、初夏に咲く白い壺状の花は先端が小さく反りかえり、ネジキやアセビの花に似ています。革質の葉を持つ常緑樹で、真っ赤な美しい新葉に出会うこともあります。
小枝をしごけば子供の掌にはすぐにいっぱいになるほど採れる実は小粒ながら甘酸っぱく、昔の子供たちには格好のおやつだったという話をよく聞きます。
わんぱく坊主が得意げに高い所によじ登り、実をパクついている様子が漢字で小小坊と書かれた字面(じづら)から、さらにはチャセンボの語感やシャシャンボの語感からも目に浮かんで来るようです。
和風庭園の趣を出すために要所々々に植えられる役木の一つとしてシャシャンボも利用されることがあるようですが、この樹木の魅力の一つは、大きくなると樹皮がはがれて赤みがかった樹肌が見られるようになることです。
眼に良いとされるアントシアニンを多く含む実は、ブルーベリーと違って熟しても皮が固く、ジャムにしてもモサモサ感があるのが少し難点ですが、冬場に入っても手に入るうれしい山の幸です。
(写真は、果実、花、新葉の順)