今月の樹木(2018年04月)
2018年 04月 26日
菅さん提供
イヌシデ(犬四手 落葉高木 カバノキ科)
花期4~5月 果期10月
シデの仲間を初めて見たのは樹木に興味を持ち始めた十数年前の季節は夏の終わりころのこと。
小さな葉の形をした果苞と一体になった種が幾重にも連なって枝にぶら下がった状態になっている樹木を見た時でした。
このような形の種を付ける樹木にチドリノキという楓の仲間があります。そのうえチドリノキの葉は楓の仲間でありながらイロハモミジのような切れ込みが全く無く、一見するとイヌシデのような葉の形をしていますので、当時生半可にチドリノキの存在を知っていたなら、このシデの仲間をチドリノキと誤認していたと思います。
春先に咲くイヌシデの花はいかにも風媒花といった感じの黄褐色の雄花がいくつも垂れ下がり、その先に緑色の苞を持った小さい目立たない雌花が付きます。樹皮には灰白色の縦に白っぽい縞模様が入り、クマシデやアカシデなどシデ類の中では最も樹肌の美しい樹木で、公園樹等に用いられてもいるようです。
シデ類のシデの由来は、花穂が玉串や注連縄などにつけて垂らす稲妻型の四手(または紙垂)に似ていることによると言われています。
植物名に付く“イヌ”は、本物に比べて劣っているとか役に立たないという意味合いで使われますが、イヌシデの場合はイヌシデより美観や用途で格別優れているシデの仲間は思い当たらないので気になっていました。
シデの仲間は良く似ていて同定しづらく、その中でイヌシデは若枝や葉に毛が多いことが同定のポイントにもなっていて、毛の多さからイヌと付いたと考えられないこともないですが、そうするとネコや他の動物でなくイヌとなったのには何か訳がありそうです。調べてみると関係ありそうなウラジロカンバという樹木が見つかりました。
ウラジロカンバはカバノキ科でも属が異なる樹木で、葉裏には白くて長い伏毛があってネコシデとも呼ばれているようです。実際にはどうかわかりませんが、ネコシデと区別するためにイヌシデとなったのではないかと思い至りました。