今月の草本(2017年 6月)
菅さん提供
フタリシズカ(二人静 センリョウ科)
花期5月~6月
ヒトリシズカとフタリシズカは共に静御前の名に因んだ草花で、フタリシズカはヒトリシズカに遅れること一か月ほどで林の中や林縁に現れます。
フタリシズカの花に少しでも興味を持った人なら、この草花の名前の由来は、菜を摘みに行った女に静御前の霊が取り憑き、その女と静御前の霊が揃って舞いを演じる能の謡曲「二人静」とかかわっていることはご存じのはず。
降り注ぐ陽光の下で鮮やかに咲き乱れる様々な花も魅力が有りますが、木漏れ日の中でひっそりと咲く花にもまた惹かれるものがあります。その代表は、と問われればこのフタリシズカと答えたくなります。
二人と名の付くとおり、まっすぐ上に伸びた二本の花穂に丸っこい花(花びらではなく雄しべの一部分)が複数付きますが、土壌の養分の関係なのか、中には一本だけの花穂のものから三本以上のものも見かけます。
華やかな白拍子の世界から義経の愛妾になり、後に義経と対立した兄頼朝に囚われ、心ならずも頼朝の前で舞い踊ることになっても義経を思い慕う舞を舞った静御前。
やがて頼朝に放免されたのち、人々の前から姿を消したその生き様を思い浮かべながらこの花を見ていると、静御前の情念がほとばしっているかのようなヒトリシズカの花姿とは対照的に、フタリシズカの花は内に秘めた情念の舞姿のようにも思えてきます。
フタリシズカは控えめで目立たない花ですが、花の名前の由来を知った後でこの花に出会えば、誰もが足を止めずにはいられない不思議と人を引き付ける草花です。
