今月の草本(2017年 3月)

菅さん提供


シュンラン(春蘭 多年草 ラン科)           

                          花期34

 古都奈良には春を呼ぶともいわれる東大寺二月堂のお水取りの行事がありますが、野や山で自然に根差した生活を送っていた昔の人は、梅のつぼみの膨らみ、雪の中から顔をのぞかせたフクジュソウ、フキノトウ等々その土地々々で毎年変わることなく律儀に自然が届けてくれる春の便りを敏感に感じ取っていたものと思います。


 オオイヌノフグリが我が世の春とばかりに野辺一面に咲くころ、シュンランも開花時期を迎えます。
 漢字では「春蘭」と書くこの蘭は、まさに春を告げるに相応しい花といっても過言ではないでしょう。
 とはいえ春を謳歌しているというような目立つ花ではありません。

 夏場には新緑の間から木漏れ日がこぼれ落ちる雑木林のやや乾燥気味の所にうつむき加減にひっそりと咲き、花の茎は透き通るような膜質の鱗片におおわれ萼片と花弁は緑色で、開店祝いや催事、贈答用で使われる胡蝶蘭やシンビジウムのような豪華さや華やかさとは全く無縁です。


 この花は古来、詩文や書画などの風流をたしなむ文人墨客(ぶんじんぼっかく)に広く愛されたそうです。

 そのような粋人が食指を動かされたのは、花言葉にある「気品」「清純」「控えめな美」「飾らない心」等のシュンランの慎ましやかなたたずまいから受ける印象によるものだったのでしょうか。

 風流を解せない小生ではあっても、この花を眺めているといっぱしの風流人になった気分に浸れる、そんな趣のある草花です。


 シュンランは花屋さんで売られているシンビジウムの仲間だそうで、学名にはシンビジウムの名も一部使われています。分類上は同じでも日本のシュンランの花姿は、和服姿の女性から感じられる奥ゆかしさや慎ましさにどこか相通じるものが有るように思えます。

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by str1685 | 2017-03-11 20:55 | 今月の草本 | Comments(0)