今月の樹木(2016年11月)
2016年 11月 08日
エビヅル(蝦蔓 落葉蔓性木本 雌雄異株 ブドウ科)
花期6~8月 果期10~11月
野にある葡萄はノブドウで山にある葡萄はヤマブドウ、と言ってしまえば簡単ですが、山に有っても分類上ではヤマブドウとそれに良く似た他の葡萄とは区別されています。
ヤマブドウが1㎝近い実をつけるのに対し、見た目で良く似ているエビヅルやサンカクヅル、アマヅルの実は5~6mm程しかなく、分布上もヤマブドウは本州以西ではごく限られたところにしか無く、九州には無いようですが他の3種は九州でも見られるようです。
古くは種を問わず葡萄の実で染めた色を葡萄色(えびいろ)といい、ブドウの仲間を葡萄蔓(エビカズラ)といったそうです。後にヤマブドウと他を分けていうようになったのは、実の大きさの違いから分ける必要があったためではないかと考えます。
子供の頃学校の帰りにエビヅルの実を見つけると喜んで食べていた九州の田舎ではエビヅルをガネブと呼んでいました。ガネブも葡萄類の古い呼び名で九州では今でも広く使われているようです。
野生の葡萄に関する記述は古事記や枕草子にもあるということからこの植物は昔の人には身近な存在だったように思われます。
枕草子には、車輪に押しつぶされたヨモギの香が牛車の中に漂ってくるのを「をかし」(趣があるの意)と表現したくだりが有りますが、清少納言が牛車の上からたわわに実った葡萄に手を伸ばして口にしたことが有ったとしてもおかしくはないでしょうね。あるいは牛車が進んで採り損ね「いと口惜しけれ」と悔しがったことがあったかも。
エビヅルの花はとても小さく雌雄を見分けにくいですが、雄花は雄しべが長いことで見分けられます。
なお、ブドウ科でも属の異なるノブドウは食べられませんので念のため。