今月の樹木12月 (2013年12月)
2013年 12月 06日
ツタ (蔦 ブドウ科)
花期6~7月 果期10月~12月
ツタは常緑のウコギ科のフユヅタに対してナツヅタとも呼ばれ甲子園球場の外壁を飾る植物としても有名で、紅葉の美しさから海外ではジャパニーズアイビーと呼ばれ栽培もされているようです。オー・ヘンリーの有名な短編小説「最後の一葉」に出てくる植物もブドウ科のツタの仲間ということです。
日当たりの良いところのツタの葉は見事なまでに真っ赤な紅葉を見せてくれますが日照条件の良くないところでは淡いピンクや黄葉するものも見られます。また、葉の形や大きさも成長段階で大きく異なります。
秋にはいかにも美味しそうなブドウによく似た実をつけますが、食べた人の話では舌を刺すような苦みがあるそうでとても食べられたものではないとか。ところが昔は樹液を煮詰めたものはあまづらという甘味料になったそうで、清少納言の随筆『枕草子』に、上品なものはかき氷にあまづらをかけたもの、というくだりがあるそうです。見た目にも細いツタからはわずかな樹液しか採れそうにありませんので大変貴重な甘味料だったと思われます。現代ならさしずめメイプルシロップならぬアイビーシロップというところでしょうか。
樹液は厳冬期に糖度が増すようです。これからの時期、ツタに出会ったときに樹液を舐めてみて甘く感じたそのとき、平安の都人の食への想いに触れられた気がするのではないかと思います。